なんだか今日は目を覚ました時に「私の母について書きたい!」と思ったのでした。こういう直感は大切にしたい。だから心のままに書こうと思う。
このブログでも母の話は書いており、度々ゲスト出演しています。
https://anzaihikaru.com/2015/05/938/
私は30代前半まで「天然な母」としか思っていなかった。
尊敬の念を抱いたことはあまりなかったのだが、この歳になりジワジワと「うちの母って実は凄い人なのでは」と気づき始めている。
うちの母には小脳がないの?そんなバカな!?
母は私もまだ生まれていない遠い昔、20代の頃に脳腫瘍になり、当時の医学では90うん%手術が成功するかわからない、助からないと言われていた病にかかった。
その筋の日本の名医(祖母が大病院の娘だったということで総力をあげて名医を見つけ出し、奇跡的に受けられたと聞いている)に手術してもらって奇跡的に命が助かったのだ。
母が助かっていなければ、当然わたしも生まれていない。
脳腫瘍のために神経が圧迫され眼も見えなくなり、周囲の対応や親も泣いてばかりだったので「わたしは死ぬのだな」寝たきりになっているときにそう思い過ごしていたそうだ。
医者から見ても、まさに助かったことが本当に「奇跡」らしい。
リハビリなども乗り越えて、普通に歩行もできるようになり、自転車にも乗れ、運動もできる。何一つ皆さんと変わらない生活を送っている。
この話は私が大きくなってから聞かされたが、母は普通に元気にみんなと同じように暮らしていたし、病を乗り越えて3人も子供を産んでいることもあり、元気すぎていまいち実感がわかなかった。どこか不自由をしていれば「母は大病を患ったのだ」と思えたのかもしれない。
だけど、7、8年くらい前だったか母が駅の階段で転び、頭をうって流血し、そのまま病院に運ばれたことがある。
流血しているのに気づかずに駅員さんに呼び止められ、「あら、ホントだわ」と流血に気づいた後、「これくらい大丈夫♪」と帰ろうとした伝説の持ち主だ。駅員さんがあまりの流血の多さに心配して強引に病院へ連絡してくれた。(駅員さん、感謝している、マジで)
そこで判明したのが、母には小脳が全くなく、頭蓋骨に穴があいたまま、今まで生きてきたということだった。
「うん、そうなのー。頭に穴があいてるのー。小脳もないのー。穴があいてるところをぶつけていたら危なかったみたい」とか、のほほんと言ってしまっている。
頭蓋骨に穴をあけ小脳を摘出した手術は今では見られない手術方法だそうで(というか奇跡的に助かっているから成功例が見れない)毎日色々なドクターや研修医が「見せて欲しい!触らせてほしい!」と寄ってきて、母は喜んで全てに応じていたようだ。
「こんなことで皆さんのお役に立てるなら、どんどん見て欲しいわ」
それはそのとおりなのだが、、、私にしてみれば、「母に小脳がない!?頭蓋骨に穴があいてる!?その状態でずっと生きてきた!?そんなこと知りもしなかった!」と、まさに「死ぬこと以外かすり傷の女ではないか!」と衝撃が走った。
心の底から生きてさえいればいいと思っていたら、それ以外望まないし感じさせない
そしてこの間、食事をしているときに雑談で突然母が言った。
「デザイナーになるのが夢だったのよね」
え?そんなこと聞いたことがなかったし、そんな素振りも見せたことがなかった。
確かに「内職でアニメのセル画塗ってたことあるよ」とか製図をやっていたので絵が得意なのだろうなぁとは思っていたけれど。
やってみる?とか絵を描くことを促す様子も全くなかった。
私は私の意思で絵を描くことや物を作ることが好きになり、デザイナーを選んだ。娘の私がデザイナーになったからといって、何も言われたことがなかったのだ。
本当に突然についこの間、聞かされて目が点になってしまった。
これって結構すごいことなんじゃないかなーと思った。
自分の夢を子供に託す親、「好きなことをしてほしい」と言いつつ、心の奥底ではちょっとはこれやってほしいなぁ〜みたいな人って結構いると思う。
最初に書いた病の話もそうだし、今回の夢の話でもそうだけど、母は心から必要のないことだと思ったに違いない。病気になったのは過去のことだし、今では元気に暮らしている。病気になって夢絶たれたけど、それも過去。
どれもこれも、過去のこと。今しか見ていない。
生きてさえいればいい。
きっとそれが若い頃から自然なことだったから、私は大人になるまで何も気づくことがなかったのだと思う。
本当に好きなことをやってほしいと思ったから何も感じさせなかったのだろう。
きっと20代の病の時に母は学んだのだろうと思う。
今生きることの大切さを。
生きることの大切さを知っているから、子どもには子供の人生を歩ませたかったのかもしれない。だから口出しは一切してこないのだ、きっと。
うちの母は私の座右の銘「死ぬこと以外かすり傷」を地で行く女なのだ。